第6章
第6章:危機からの脱出
太陽の子 —遥かなる宇宙への旅—(文章:Cloude 3.7 sonnet)
「こっちだ!急げ!」
ネプチューンは太郎の腕を引き、議場の裏口へと駆け出した。周囲では評議会のメンバーたちが慌ただしく動き回り、防衛システムの起動準備をしていた。
「何が起きているんですか?」太郎は走りながら尋ねた。
「シャドウ・イーターという種族だ。彼らは恒星のエネルギーを喰らう。長年、太陽系の外側で活動していたが、ついに太陽に目を向けたようだ」
二人は狭い通路を抜け、小型の宇宙船が待機している格納庫に到達した。
「この船で脱出するんだ。お前のような特異なエネルギーを持つ者は、シャドウ・イーターにとって格好の獲物だ」
太郎は振り返った。中央の巨大建築物から黒い煙のようなものが噴出し始めていた。
「でも、評議会は?みんなは大丈夫なの?」
ネプチューンは船の扉を開きながら答えた。
「心配するな。太陽には強力な防衛システムがある。だが、今のお前の安全が最優先だ。乗れ!」
太郎は迷いながらも船に乗り込んだ。内部は意外にもシンプルで、二つの座席と複雑な操縦装置があるだけだった。ネプチューンは素早く操縦席に座り、制御パネルを操作し始めた。
「行くぞ、シートベルトを締めろ」
船は振動し、格納庫から発射された。太陽の内部空間から外へ、同じ入り口を通って脱出する。外に出ると、太郎は息を呑んだ。
太陽の周囲には、無数の黒い物体が群がっていた。それらは一見すると宇宙船のようだったが、形状が絶えず変化していた。まるで生命体のようだ。
「あれが…シャドウ・イーターですか?」
「ああ。太陽のエネルギーを吸収している。我々の計算では、放っておけば百年以内に太陽は消滅する」
ネプチューンの言葉に、太郎は背筋が凍る思いがした。地球にとって、太陽の消滅は全ての終わりを意味する。
「何か対策はないんですか?」
「それを見つけるのが、お前の両親の使命だった」
船は高速で太陽から離れていった。シャドウ・イーターたちは太陽に集中しており、小さな船には気づいていないようだった。
安全な距離まで離れると、ネプチューンは船を減速させた。
「さて、クリスタルを見せてくれ」
太郎はポケットからネプチューンに渡されたクリスタルを取り出した。透明な結晶の中に、微かな光が渦巻いている。
「このクリスタルには、両親の研究データが記録されている。だが、特殊な方法でロックされている」
「どうすれば見られるんですか?」
ネプチューンはクリスタルを手に取り、じっと見つめた。
「通常、このような保安クリスタルは持ち主のエネルギー波形でのみ解除できる。つまり…」
太郎は理解した。「俺のエネルギーが鍵になるってことですか?」
「そうだ。試してみろ」
太郎はクリスタルを両手で包み、目を閉じた。自分の内なるエネルギーに意識を集中させる。頭から放出される炎のような熱気が、手のひらに伝わっていくのを感じた。
クリスタルが温かくなり、光が強まった。そして突然、クリスタルから光線が放たれ、船内に三次元映像が広がった。
映像の中には、太郎が評議会で見た二人の姿があった。男性が口を開いた。
「これを見ているのが我々の子供なら、私たちは既にいないのだろう」
女性が続けた。「あなたの名前は何というの?私たちはあなたを待ち望んでいたのよ」
太郎は感情が込み上げてきた。「太郎です…俺の名前は太郎」
映像の二人は反応を示さなかった。これは録画されたメッセージだった。
「私たちはシャドウ・イーターの脅威を研究していました」男性が説明を続ける。「彼らは恒星のエネルギーを吸収し、やがて恒星系全体を死に至らしめる存在です」
女性が映像の中で何かの図表を指し示した。「私たちは対抗策を発見しました。シャドウ・イーターは特定の周波数のエネルギーに弱いのです。私たちは、その周波数を放出できる装置を開発していました」
「しかし、実験中に事故が起きた」男性の表情が暗くなる。「私たちは実験装置と共に、異次元空間に飛ばされてしまった。そして、そこで…あなたが生まれたのです」
太郎は映像に見入っていた。両親の姿、声、そして自分の出生の秘密。全てが明らかになりつつあった。
「シャドウ・イーターを倒すカギは、あなたの中にあります」女性の声が優しく響いた。「次の座標に向かってください。そこに、全ての答えがあります」
映像と共に、宇宙空間の座標が表示された。それは火星と木星の間、小惑星帯の一角を指していた。
映像が消え、クリスタルは再び静かな光を放つだけになった。
ネプチューンは太郎の肩に手を置いた。「行くのか?」
太郎は決意を固めた表情で頷いた。「行きます。両親が残した使命、必ず果たしてみせます」
船は新たな目的地に向けて、進路を変更した。太郎の心には、両親への思いと、太陽系を救いたいという強い意志が燃えていた。
公開日: 2025/6/4文字数: 2024文字