第2章
第2章:身分なき青年
太陽の子 —遥かなる宇宙への旅—(文章:Cloude 3.7 sonnet)
時が流れ、太郎は立派な青年へと成長した。鍛え抜かれた体と、相変わらず頭から放たれる炎のような輝きは、街でも一際目立つ存在だった。
「太郎、そろそろ職を考えなくちゃね」
朝食の席で、淑淑の父が新聞から顔を上げて言った。淑淑は今や有名な画家として独立し、時々帰省する程度になっていた。
「わかってるよ、お父さん。でも…」
太郎は箸を置き、窓の外を見つめた。彼にとって最大の問題は、自分の出生を証明する書類が一切ないことだった。戸籍も住民票もなく、学校にも通えなかった彼は、正規の教育を受けていない。
翌日、太郎は職安に足を運んだ。しかし、履歴書に記入すべき学歴も職歴もなく、その場で断られることがほとんどだった。
「申し訳ありませんが、身分証明がないと雇用できないんです」
そう言われるたびに、太郎は歯がゆい思いをした。時には、頭からの炎が強くなり、面接官を驚かせることもあった。
「太郎、無理しなくていいんだよ。うちの工房で手伝ってくれれば」
淑淑の提案は優しかったが、太郎は首を振った。
「姉ちゃんには世話になりっぱなしだ。自分の力で生きていきたいんだ」
ある日、太郎は港の倉庫で日雇いの荷揚げ作業を手伝うことになった。その力強さと効率の良さは現場監督の目に留まり、週に三日の仕事を任されるようになった。
しかし、太郎の心は満たされなかった。夜、彼は屋根に上り、星空を見上げた。
「どこかに、俺の居場所があるはずだ」
ふと、太郎は新聞の記事を思い出した。海外旅行が一般的になり、友人たちは休暇に異国の地を訪れる話をよくしていた。しかし、パスポートを持てない太郎には、それすら許されなかった。
「俺は、この国にさえ存在しない人間なのか」
そんな時、太郎の目に飛び込んできたのは、夜空に浮かぶ満月だった。そして、その向こうに輝く太陽の存在を、彼は強く意識した。
「もしかして…太陽なら、俺のことを知っているかもしれない」
突飛な発想だったが、太郎の心に火が点いた。太陽と自分の外見の類似性。子供の頃から感じていた不思議な親近感。
「決めた。俺は太陽に会いに行く」
太郎は拳を握り締めた。荒唐無稽な計画かもしれないが、何もしないよりはマシだ。彼は翌朝から、太陽への旅の準備を始めることを心に誓った。
屋根の上で横になりながら、太郎は夜空に浮かぶ星々を眺め続けた。いつか必ず、自分の出自を知り、この世界で正式に認められる存在になると、彼は固く決意したのだった。
公開日: 2025/6/4文字数: 1048文字