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第1章 「石の目覚め」

命の石 - 造物者の筆跡(文章:GPT4.1、画像GPT4o)

第1章の挿絵
 黄河のほとり、小さな村に住む農夫・李春(りしゅん)は、毎日を畑仕事に追われていた。 春のある日、彼は畑の隅で、これまで見たこともないほど美しい石を掘り当てる。淡い青と金色が混じり合い、まるで夜空に浮かぶ星雲のような輝きを放つその石は、手に取るとほんのりと温かかった。 「なんだろう、この石……」 李春は不思議に思いながらも、家に持ち帰り、棚の上に飾った。石は、日が沈むと淡い光を放ち、部屋の隅をぼんやりと照らした。李春の妻・梅花(ばいか)は「そんなもの、縁起が悪い」と眉をひそめたが、李春はなぜか石を手放す気になれなかった。 その夜、村では奇妙な出来事が起こる。長らく子を授からなかった夫婦に、突然赤子が生まれ、枯れかけていた老木が一夜にして青々と葉を茂らせた。逆に、健康だった家畜が急に息絶えたり、村の犬が死んだはずなのに翌朝元気に走り回っていたりと、説明のつかない現象が相次いだ。村人たちは「神の怒りか、祝福か」と騒ぎ始め、村の長老・陳(ちん)は「これは天の兆しだ」と呟いた。 李春は、石を手に入れてから村に異変が起きていることに気づき始める。夜ごとに石を見つめていると、心の奥底に何かがざわめくのを感じた。夢の中では、見知らぬ景色や、古代の神殿、そして石を囲む謎めいた人々の姿が現れる。目覚めるたびに、李春の胸には言い知れぬ不安と期待が入り混じった。 ある晩、李春が石を手にしていると、ふいに家の戸口が軋む音がした。外を覗くと、月明かりの下に、長い外套をまとった見知らぬ男が静かに立っていた。男は李春に向かって、低い声で言った。 「その石を、どうか私に見せてくれませんか。」 李春は警戒しながらも、男の目にただならぬ真剣さを感じ、石を差し出した。男は石を手に取ると、しばらく目を閉じて黙っていたが、やがて深く息を吐き、そっと石を返した。 「この石は、ただの宝ではありません。持つ者の運命を大きく変えるでしょう。」 男はそう言い残し、闇の中へと消えていった。李春は戸惑いながらも、石を再び棚に戻した。しかし、その夜から李春の夢には、ますます鮮やかな幻が現れるようになる。石を巡る運命の歯車が、静かに動き始めていた。
公開日: 2025/6/3文字数: 922文字